新しい服が欲しいとき買う前に読んで欲しいこと

新しい服を買う前に覚えておいて欲しいこと

環境負荷を身に纏う??

衣類製造では、染色・洗浄などの加工のために大量の水の使用が欠かせません。例えばTシャツ1枚を作るのに約2,700Lジーンズ1着を作るのに約3800Lです(参考出典:UNESCO Institute for Water Education)。
排水は処理されていますが、河川を少なからず汚染しているのは事実です。民間企業が自主的に行う調査などで、繊維工場地帯周辺の河川の水から化学物質が検出されたというケースは多々あります。

さらに衣類の原料には、化学物質も大量に使用されています。今日製造・流通する衣類の原料には8000種類以上の化学物質が使われていてその大半が、いつまでも自然界に残り続ける難分解性のものです。特にナイロン・ポリエステル・アクリルなどの合成繊維製の服は、洗浄の際に大量のマイクロファイバーが漏れ抜けて河川に流れ込み海洋汚染問題となっています。
マイクロファイバーは微細化された化学繊維のことで、いわゆる”マイクロプラスチック”の一種です。マイクロプラスチックは言うまでもなく、海洋生態系から人体の健康にまで悪影響をもたらしています。

それから製造過程では大量のエネルギー消費によるCO2の排出も問題です。
日本ではアパレル産業単体で衣類の原材料の調達から廃棄までのプロセス全体におけるCO2排出量は約9,500万t。この量は国内の排出量全体の約8%にも相当すると言われています。

でも天然ならいい…わけでもない

現代では、衣服の原料となる繊維も化学合成品が主流です。2010年代半ば以降すでに原料に使用される全繊維のうち7割が化学合成品になっています。
こう聞くと先に述べたような資源や環境への負荷は化学品を使うことに問題があるのではないか、と思うかもしれませんね。でも実は、天然繊維を使うからといっていいわけでもないんです。

植物繊維の代表格の綿を例に挙げます。綿花栽培にも大量の水が必要で、1kg分の綿を作るのに使う水の量は約10000Lとも言われています。
さらに農薬・肥料も大量に必要で、綿花栽培のために使われる殺虫剤だけで現在の世界での全農薬使用量の11%を占めると言われています。

服は最後にどこに行く?

衣服ロス…ロスと言っても着る服がないわけではない

これまでに読んでいただいた通り、服を作るのに資源も環境も消耗されます。なのに現代の問題はこればかりではありません。今度は製造された後の服の話です。

日本では男性用Tシャツ換算にして年間33億着分(約100万トン)の衣服が廃棄されています。同じく日本では年間約29億点の衣類が生産され、新品のまま誰にも着られず廃棄されていく衣服だけでも約10億点以上あると言われています。
こうした衣服の廃棄問題は”衣服ロス”または”ファッションロス”と呼ばれています。ロスと言っても着る服がないわけではありません。むしろ逆。

過剰生産が生んだおかしな現象

アパレル業界はここ数年売上規模は減少しているのに生産量は上がっているという状況。アパレル市場規模は1991年がピークで約13兆円ですが、2008年に10兆円を割って以降は低迷または横ばい。ちなみに1世代あたりが年間に衣服に費やす支出額も5年で3割程度の減少ペースです。
アパレル業界は派手なイメージで、さらに特定の大企業の好調ぶりがよくメディアに上がるので業界全体が上向きに思えますが実際は全くの逆なんですね。なぜなら、売ることだけを考え原価が劇的に安い服を大量に作っているからです。もちろん、ファストファッションの台頭が影響しています。

結果、不要な服が大量に残り、最終的にはそれは発展途上国などに輸出されます。2016年には日本から24万トンの衣服が輸出されたそう。
日本に限らず他の先進国も同じように輸出しており、その量はアメリカが75万トン、ドイツは50万トン、イギリスは35万トンにもなったそうです。

古着の送り手ともらい手の意識ギャップ

名目は転売品としてだけでなく寄付として“善意”に飾り付けられ送られるものもあります。なので、先進国側には生活水準の低い国に不要になった衣類をあげていいことをしているという感覚が少なからずあることもあります。
でも必ずしも現地でその行為が喜ばれているとは限りません。例えばアフリカのガーナには先進国で不要になった衣服が毎週1500万着届いていますが、その約4割は現地でも着られることなく、結果埋め立て地に持って行かれます。これって先進国の不用品を現地が最終処理しているということですよね。

それだけじゃありません。相手に服が必要だと思うのなら服の作り方を教えることが長期的には最善なのに、現状では先進国が安すぎる大量の服を現地に流入させることで本来育っていたかもしれない現地人たちの生産技術も能力も雇用も奪ってしまっています
そうなると、どんなに善意だとしても結局は不要なものを自分たちの都合で押し付けることにしかなりませんよね。

まとめ…服、そんなに必要?

ミレニアル世代の独身女性は年間8万円以上衣服に費やしているとか、1着を平均7回着たら手放してしまうそうです。
まずは服を買わないこと・今持っている服を大事に着ることを心がけないとですよね。購入前に深呼吸して、本当にそんなに服が必要なのか?ということを考えましょう。
消費する側が欲しがるから製造者が調子に乗るということも覚えておくべきです。

でもさすがに新しい服が必要なこともありますから、そんなときは、環境にいい原料・製造方法で作られた商品を選ぶという考えも大事です。
そしていざ不要になっても“捨てずに古着屋に持って行って売りさえすればOK”ではありません。
1着1着に責任を持って買い物したいですよね🌱

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