砂糖と人間の甘くない関係

人間にとって砂糖は”悪”

砂糖と人間、10000年の歴史

砂糖と人間の歴史は長く、10,000年にもなると言われます。
紀元前8,000年ごろ、さとうきびがニューギニア周辺で発祥したという伝説から始まり、紀元前300年ごろ、インドで精製され”砂糖”として世界に広がりました。その後11世紀ごろまで砂糖は、医薬として摂取され始めます。しかも、”砂糖こそが万能薬”と言われるほどだったそう。ただし今となっては、それは当時の人類のカロリー摂取量が基本的に低かったため、エネルギーとして砂糖を摂るだけで患者が自然治癒していたからだとされています。
とにかく砂糖が讃えられる時期は続き、1800年代中頃まで、砂糖は希少で高価でしたが、海外から精糖技術が入り近代工業化時代になり始め、一気に普及しました。それにより健康被害も増え、この200年の間に砂糖は体に悪い、と言われるようになりました。この辺りで、砂糖は医薬品から一転して“悪”のイメージに変わってしまいます。

甘いものを食べすぎると体に悪い…は本当

砂糖の存在ってこんなにドラマチックだったんです。歴史や環境や技術は変わるとはいえ、人間も適当だなあとも思ってしまいますが…時代に則した知識を持っておかないといけませんね。

とにかく現代においては、甘いものの食べ過ぎが体に害を与えるという認識に異義を唱える研究家はいません。みなさんにもその認識があると思いますが、甘いものを食べすぎると太るとか病気になるというのは、一般的な事実として認められています。

でも、そのこと自体の認知率は高いものの、砂糖が体に悪いのがなぜで具体的にどういうことだからそういう結果になるかまでのことを知っている人というのはそう多くはないのではないでしょうか?
次に砂糖による健康被害として最低でも知っておきたい3点と予防方法・注意点を紹介します。

知っておくべき砂糖による健康被害の基本3点

1) 内臓脂肪型肥満・糖尿病

まず、糖分を摂り過ぎるとカロリーが消化しきれず、内臓脂肪になります。内臓脂肪は胃腸など臓器の周りにつく脂肪です。これが砂糖に関する最も大きな弊害とも言えます。“甘いものの食べ過ぎは太る”…もはや格言ですよね。

そして内臓脂肪は糖尿病を引き起こす原因の一つになります。内臓脂肪は血糖値を下げるためのインスリンの作用を妨害するインスリン抵抗性を引き起こす原因とも言われます。この状態が長く続くと、糖尿病になります。
*インスリン抵抗性=砂糖を摂ると血糖値が上がるのに対してそれを抑えるために体内にインスリンが分泌されますが、糖分の過剰摂取でインスリン作用が効きにくくなくなること。インスリンは血液の中の糖をエネルギーに変えて血糖値を下げる唯一のホルモンです。

内臓脂肪型肥満や糖尿病の予防は、有酸素運動をすることが効果的です!有酸素運動で使われるエネルギーは脂肪です。特に、20分以上続けた頃から内臓脂肪が使われるとされています。20分以上のウォーキングやランニング、水泳などで体を動かしましょう。もちろん、食べ過ぎないことが肝心。

2) AGE

糖はタンパク質を糖化させ、劣化させます。そして糖化されたタンパク質は最終的にAGE(=終末糖化産物:Advanced Glycation Endproducts)となり、体内広範囲にこびりつき、病気を起こします。皮膚に蓄積されるとしみやしわ、たるみの原因になるため、老化も促進すると言われています。

AGEの予防は、食生活を見直すことが大事です!血糖値を急上昇させやすく、AGEを溜めやすい揚げ物や加工食品などをなるべく摂らないようにすることです。普段食べているものを見直し、さらに自炊するようにすれば、AGEを予防できるほか糖摂取量自体を減らすことができます。

3) 虫歯

食事や甘いものを食べるたびに、口の中は酸性に傾きます。糖は歯の表面にこびりつく汚れである”歯垢(しこう)”となり、酸性になった歯を溶かして虫歯を作っています。

虫歯の予防は、食事中よく噛むことが効果的です!咀嚼をすればするほど唾液分泌が促されます。唾液は酸を中和させるため、自然の虫歯予防になります。それから、歯垢を残さないよう、歯磨きをしっかりすることも言うまでもなく大切です。
ちなみに現代日本人が1回の食事にする咀嚼の回数は約600回ですが、100年前は約1500回、1000年前は約2600回、2000年前は約4000回と、激減しています。これはこれで、糖摂取による被害以外にも重大な問題となるリスクが高まりますので、注意が必要です。
咀嚼について詳しくは、こちらの投稿【食べるというより咀嚼する】をご覧ください。

マイルドドラッグ

こんなにリスクのある砂糖ですが、どうしてそれでもなお苦しむ人がいるのでしょうか?それは、砂糖に一種の中毒性があるからです
近年、甘い食べ物特にスナック菓子や炭酸清涼飲料水などのことを、マイルドドラッグとも呼ぶようになっています。中毒性や依存性があるのに規制や規律がない食べ物や飲み物のことを意味します。
それらに必ず使用される共通の原材料といえば、砂糖ですよね?つまり、砂糖=マイルドドラッグとも言えます。砂糖には規律や規制がないだけで、実はアルコール、タバコと同じなんです。
近年では、甘いものが欲しくて我慢ができず、心身に疾患が出ているのに食べるのがやめられない症状を”砂糖依存症”として、明確に認知しています

ある動物実験では、動物に普通の餌と砂糖を混ぜた餌を食べさせました。すると、普通の餌を与えた方の動物は動物はとある程度の量を食べると脳が満腹を感知し、食べるのをやめました。一方、餌に砂糖を混ぜると、食べ続けて止まらなったそうです。

糖質を自然に必要な分以上に与えられるとその刺激の強さに脳が興奮し感覚が麻痺します。そして、中毒・依存になり、心身がボロボロになるんです。

特に注意したいのが、シュガーハイ甘いものを食べた後の血糖値の急変動が引き起こす興奮状態、情緒不安定、落ち着きのなさ、怒りやすさが該当します。依存ほど深刻にはならないととも言う人もいますし、これについては根拠を巡り賛否両論あるようですが、甘いものを食べた後にその傾向に陥ることが高いのは事実です。特に小さなお子さんには顕著に現れますので、甘いものを安易にあげるのは注意です。

砂糖とのうまい付き合い方

どのくらいなら食べていい??

では、どのくらいなら食べていいのでしょうか?
WHO(世界保健機関)の推奨摂取量は、一般的な成人で1日25g以内とされています。これは総摂取カロリーの5%までが望ましい糖類摂取量という考え方によります。大人1日の総摂取カロリーが約2000キロカロリーという前提で、その5%は100キロカロリーになります。これが砂糖に換算すると25g相当になるというわけです。

対して現代日本人の1日の平均糖分摂取量は平均50gで、WHOの推奨摂取量の2倍です⚠️かつての健康大国日本も、今では肥満増加中なんです。ちなみに何気ない普段の食品に含まれる砂糖の含有量は以下。
・ポテトチップス一袋で30g
・500mlのペットボトルのジュースで40〜50g
・カップ麺で50〜60g…
これらのどれか一つ摂取しただけで、もうWHOの推奨摂取量を超えてしまいます。やはりこれらの摂取は避けるべきです。

気にするべきは量だけでなく、質も

例えば白砂糖は特に注意が必要です。白砂糖は精白の過程で栄養価はほとんどなくなっている上、血糖値の急上昇を招く原因になるからです。白砂糖の摂取は控えて、代わりに素材そのままの甜菜糖やキビ砂糖、またはハチミツ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、アガベシロップなどを取り入れるようにしましょう。

ただし忘れてはいけないのは、そもそも野菜や果物には自然の糖が含まれています。無理に味付けをしなくても、十分に甘みを感じるものです。できる限り素材の味そのもので味わうようにしましょう。

悪なのに規制されない…そこにはちょっと深い理由が

これだけ危険性がわかっていて、明確な規制や表だった注意喚起はなぜされないのでしょうか?それは、すでに現代社会に砂糖があまりにも溢れてすぎていて、規制ができた場合発生する利害関係が大きすぎるのが主な原因と言われています。簡単に言えば、ビジネス上今更規制ができない状況だからです。

それから、散々糖を悪く言ってきてしまいましたが、糖質が完全になければないで私たちは生きていけないのも事実です。完全な糖質断ちなんてすると、低血糖症などを引き起こすので危険です。そもそも糖質は生物に欠かせない成分なので、敵じゃなく仲間なんです。
だから、うまく付き合うしかないんです。
ではどういうのがうまい付き合い方か?例えばお祝い事や何かのご褒美としてたまにスイーツを食べる…。そのくらいの感覚なら、体への害より心の栄養としてプラスになるのではないでしょうか。

結論として、砂糖との付き合い方は、能動的に摂取しないことが大事。現代を生きるには、受動的に摂取する砂糖まで完全に避ける生活は難しいですから。だから、あとはいかに能動的に食べる甘いものを減らすかしかありません。
普段から食べている物と自身の生活自体をよく把握しておくこと、これが大事ですね!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です