会話は人を幸せにする

現代人はもっと、会話しよう

会話しないとボケる…は本当

“会話をしなくなるとボケる”や“よく喋る人は元気”と言いますよね。実はこれは割と適確で、脳科学的にもある程度証明が可能な事象です。

まず、会話をすること自体が脳にいいと言われています。会話をすると、脳の中でも特に重要と言われる分野、前頭前野が刺激されるからです。前頭前野は感情や行動の抑制などを司っていて、ここを活性化することは脳自体の健康を保つことと同じと言われるほどです。人間の前頭前野は脳全体の30%を占め、他の動物と比べて特にその比率が大きいそう。

人間が喋り出したのが先か、前頭前野の発達が先かは不定かですが、どちらにしても会話と脳には深い関係があり、会話が脳を健康にすることは間違いないようです。
ついでに言えば、ご存知の通りコミュニケーションの手段として言葉を使うのは人間だけですが、ほかにもう1つ、動物の中で人間のみができることがあります。それは、”複雑な感情体験”です。感情というものも、言語を使いコミュニケーションを取れるようになったからこそ生み出されたと考えられています。会話と豊かなや感情を体験することが、脳にいい刺激になるということになりますね。

孤独でいることのリスク

それなのに残念ながら現代人は、他者との関わる機会が減少傾向です。その一方で人間関係は複雑化し、ストレスを抱える人は増えています。これでは会話に抵抗を感じて、独りを好む人が増えても不思議じゃありませんね。

気持ちはわかるのですが、だからと言って人との関わりが少ない状態は危険です。なぜなら人間は社会的動物なので、人間にとって人との関わりは呼吸や水と同じくらい必要だからです。

”独りでいることが心から平気”という人は実際にはいません。第一に、人間が長時間コミュニケーションを取らない状態を続けるとストレスが増加します。ストレスが溜まり続けると悩みやすく落ち込みやすくなり、悪化すればうつ病や認知症を発症します。それに、体内の免疫力が下がるため病気にもかかりやすくなってしまいます。

ちなみに、ストレスが溜まることにはもう一つリスクがあります。まず、“ストレスを溜める”というのは“我慢をする”ということでもあります。我慢を続けて、感情や欲求を抑制しすぎると、反動でギャンブルやお酒など依存症のリスクがある行動に走ってしまいがちになります。ひとたび何かしらの依存症に陥れば、日常生活はもちろん、そこから心身を蝕むことにもなりかねません。 最近では、ほんの数年前には聞きもしなかったような依存症が増えていますよね。これもやっぱり、コミュニケーション不足による現代病ということなんです。
▶️依存症に関する記事はこちら【一寸先の依存症】

会話は人を幸せにする

今一度、思い出していただきたいです。冒頭に挙げたように、会話することは脳にもいいんです。

それに、会話すると幸福感も生まれます。というのも社交性のある会話をすると、幸せホルモン・オキシトシンが分泌されることがわかっているからです。つまり人間は誰かと会話をすると幸せになるようにできているんです。
確かに誰かに話をして、共感や同調を得られるとホッとしますよね。
でも話すだけでなく”相手の話を聴くこと”でも多幸感を得られるようです。なぜならオキシトシンは別名”思いやりホルモン”と呼ばれるように、相手を思いやるときほど多く分泌されると言われているからです。つまり、会話相手の話をよく聞き相槌を打ち共感するということで、自分も幸せになるんですね。

全ての会話がポジティブではないかもしれません。でもそもそも複雑な感情を体験できること自体が、あらゆる動物の中でも人間にしかできない特別なこと。だから割り切ってしまうのもありですよね。案外その方が、開き直って人生を楽しめたりするものです。
ということで、人間にしかできない”会話”というコミュニケーションをぜひ現代人はもっと積極的にするようにしましょう!

会話は量も質も大事…

一体どのくらい会話すればいいの?

会話はもちろん多ければ多いほどいいですが、どのくらいが最低限なのか、何か目安が欲しいですよね。日本では昔から、1日10人と会話するとボケないというような人生教訓があります。これについては出典も根拠も不明ですが、果たして10人という数字はみなさんにとって多いでしょうか?少ないでしょうか?

実際に人は1日どのくらい会話をしているか、それがわかる面白い研究があるので紹介します。
2017年に国立国語研究所が行った研究です。世代も生活環境も異なる不特定多数の243人の男女を対象に729日かけて、全9,272件もの会話を抽出した大規模な調査を行いました。これによると、日本人は平均1日に12.7人と合計6.2時間の会話をしていることがわかりました。時間÷人数で単純計算すると、合計して1日に13人、それぞれ30分ずつ程度話していることになります。
人は割とそれなりの人数とそれなりの時間、会話をしていることがわかったんです。

でも、たくさん人と話す仕事もあるから、そういう職に就いている人が多いんじゃないの?と思う人もいますよね?
実は同研究では会話の種類と割合までまとめています。その結果、人が毎日する会話のうちの61.9%が雑談で、仕事を含む用事や相談が32.4%、会議や会合が3.4%、授業や講演などが2.3%でした。人は圧倒的に、雑談をたくさんしているんです。

この結果に比べてあまりにも日々人と話す機会が少ないという人は、毎日1人でも多い人と少しでも多くの会話をするように心がけるといいかもしれませんね。
さらに欲を言えば、新鮮な会話をするといいんです。例えば1日13人と話はしているとしても、全員が毎日顔を合わせる職場の同僚で、しかも話す内容も基本的に毎日同じような内容だとしたら、これではあまり脳の刺激にもなりません。
なかなか毎日違う人と会って話すのも難しいかもしれませんが、ちょっとしたコツで、会話を新鮮にすることは可能です。それは、できるだけ新しく言葉を覚えたり、普段使わない言葉を日常生活でも使ったりする、ということです。

質を上げることも意識しよう

日本語には20万単語以上があると言われていますが、一般的に日本人の成人が日常生活を問題なく過ごすのに必要な単語数は5,000語程度と言われています。日本語の敬語やその他の文法的な表現は複雑ですが、単語を並べる最低限の意思疎通という意味では、確かに5000語でも十分のようには感じませんか?案外日々使っている言葉って多くないものなんです。しかも、年を取るごとに、日常的に使う単語の数は減っていくそう。ということは単純に、毎日同じようなことしか言っていない、ということにもなりますよね。

最近では、外国語の学習方法で、新しい単語を覚えるよりすでに知っている単語をうまく使い回す方がいいという考え方も出回っています。人間は歳をとると新しいことを覚えるのが難しくなりますから、それも確かにいいようには聞こえますよね。
でも実は、そうでもないんです。少ない単語でもコミュニケーションは取れますが、それで十分だとか楽でいいやと思ってしまっていたら要注意です。

2016年にトルコのボグジャジチ大学で、異なる表現方法が情報処理に及ぼす影響に関する研究を行いました。また、2018年にはフィンランドのユヴァスキュラ大学で、言い換え技術の使用がコミュニケーションの質に与える影響度を研究しました。どちらも簡単にいえば言葉とコミュニケーションに関する研究です。結果、次の事実が浮かび上がりました。

”同じ単語を使いまわすと、コミュニケーションの効果が低下する”

要は、誰かと話すときに同じ単語ばかりを使い続けてしまうと、コミュニケーションの質が低下してしまうということ。コミュニケーションの質が低いと、自分自身の印象にも悪影響が出てしまいます。例えば、自分の人間性や魅力、自分に対する相手の興味も薄れてしまうことになります。

だから、せっかく日本語には20万単語もあるんですから、できるだけ新しく言葉を覚えたり、普段使わない言葉を日常生活でも使ったりするようにしましょう!そうすれば、コミュニケーションの質は上がり、同時に自分の魅力も向上するので、社会生活はきっと楽しくなりますよね。使う言葉の数が多いほど幸福になる、と言っても過言ではないかもしれません。

たくさん会話して脳を健康に、自分を幸せに!

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